「生物と無生物のあいだ」を読了。
「生命とは自己複製システムである」
「生命とは動的平衡にある流れである」
本書のテーマはこの2つに要約される。
その発見に取り組んだ人々の列伝と
著者自身の経歴を織り込んだ
ミステリー仕立てのエッセイに
しているところが素晴らしい。
帯に「読み始めたら止まらない」
とあるとおりだ。
登場する科学者それぞれの
悲喜こもごもの人生と、
生物の仕組みの不思議と
その裏にある”時間”というものの
非情さがパラレルになり、
ある種の諦念が通奏低音となっている。
それが、
哲学的な書としての魅力も醸し出していて、
理系の本ながら文系でも
興味深く読める本にしている。
最後に置かれた、
「私たちは、自然の流れの前に跪く以外に、
そして生命のありようをただ記述すること以外に、
なすすべはないのである」
という文章を読むとき、
読者は生命と人生について新たな視点から
眺めていることに気づくはずだ。
すべての人に強く一読をおすすめしたい。
しかし、
けっして簡単な読み物ではないこの本が、
50万部以上売れているというのだから、
日本の未来にも期待を持つことができるかもしれない。