May 29, 2008

アテンションの奪い合い

「グーグルに勝つ広告モデル」を読了。

マスメディア、ひいては
すべてのメディアについて考える
分かりやすい視点を提供してくれる本だ。

中心となる考えはひとつ。

   テレビ、新聞、雑誌、ラジオの4マスメディアの
   ビジネスモデルの本質は、大衆の注目の卸売です。
   英語でいうアテンションを集めて卸売りしている、アテンション・エコノミー、
   これが20世紀型マスメディアの本質です。

この考えを軸に
マスメディアの現状と今後の推移予測、
そして将来への対応策を論じている。

著者は、まず、
1)消費者のアテンションを獲得するパワー=仕入の戦い
2)獲得したアテンションを販売するパワー=卸売の戦い
の2点から分析をするという。

1)の仕入の戦いに関しては、
ネットと代替性の高いアテンションから、
順番にマスメディアからネットに
シフトするだろうというのが著者の考えだ。

その代替性を考えるための軸として
著者があげているのが、
 1)提供情報
 2)情報の消費シチュエーション
 3)アクセススタイル
の3点で、その上位概念として、
「そのメディアに接触している
本質的な理由は何か」も考慮すべきだという。

そして、AMラジオを例にとって、
「提供情報」からはネットに簡単に代替されるが、
「シチュエーション」が「自動車の中」「仕事中」など、
ネットが代替しにくい場所であり、
「アクセススタイル」もクリックやスクロールなど
能動的にならなければならないネットとは
根本的に違うと分析する。

2)の卸売の戦いに関しては、
 マスターゲット←→セグメントターゲット
 動画・音楽・情緒的・感覚的←→文字・図像(写真)・理性的・説得的
の2軸によるポジショニングマップで分析する。

理性的・説得的メディアでは、
マスにコミュニケーションする新聞、
セグメントにコミュニケーションする雑誌。
情緒的・感覚的メディアでは、
テレビ・ラジオともにマスがターゲットになる。

製品が成熟してくると
商品の特性上の違いがあまりなくなるので、
「情緒的な価値」が重要になる、
ということを前提にして、
これまでになかった、
セグメントターゲットに情緒的・感覚的な
訴求をするメディアとしての
インターネットの新しさを強調している。

その上で、
4マスメディアそれぞれを分析して、
今後のアテンションのシフトを予想し、
そのトレンドにどのように対応すべきかについて、
提言を行っている。

正直言って
対応策については疑問も多いが、
前提となる分析は明快で、
頭の中が気持ちいいくらいに整理される。

メディアの今後を考えるために
ぜひ一読をおすすめする。

[Books&Magazines] Posted by tokuo | TrackBack
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