細菌戦を研究していた731部隊と
その隊長・石井四郎についての本「731」を読了。
下山事件に続いて、
”闇”シリーズ第2弾とでもいうべき本だ。
石井本人による新発見のノートに基づいて
731部隊の実際の姿と
戦後のGHQやソ連との駆け引きの実体を
綿密な取材で描き出している。
fs負け戦の中で
”最後の秘密兵器”としての細菌兵器に
賭けていってしまう軍部とそれを利用する石井。
戦後は貴重な命や莫大な費用をかけた
研究データをめぐってアメリカとソ連とで争奪戦となる。
「炭疽菌についていえば、
最も有効な菌であると確信しました
・・・<中略>・・・
最も有効な伝染病はペスト」(P311)
こういった”知識”がオウム真理教の事件にまで
つながっだんだと思うと恐ろしい。
圧巻は、
ソ連の侵攻とともに研究の痕跡を消すために
すべてを破壊して逃げのびる経緯。
瀬島についての本にもあったが、
ソ連がまさに到着する寸前に隠滅工作が行われた。
飛行機を飛ばして上空から破壊の証拠写真をとるなど、
徹底している。
終戦がらみで、
8月15日をはさんで何度も
日本と満州の間で飛行機が飛んでいるのも驚きだ。
戦後については、
薬学エイズ問題の「ミドリ十字」の原点も
731部隊にあるとは聞いていたが、
石井中将が直接関わっていないというのは意外だった。
それにしても、
またしても出てくるのが、
責任をとらない指導者や参謀たち。
瀬島龍三もちょっとだけだが登場する。
情報を握っていた一握りの人間たちが
大衆の運命を翻弄してしまいながら、
反省をしているように見えないことには、憤りを覚える。
「敗戦という最悪の事態を迎えながらも、
大本営の大将や中将が
まるで他人事のように戦争を振り返っている
・・・<中略>・・・
大将や中将といえども
帝国陸軍という大きな歯車のなかでは、
ひとつのコマにすぎなかった
といっているように思える」(P153)